EMを利用した複合型農業の経験談を語る⑪

EM技術

2024年2月8日更新

私がEMと関わったのが2001年からで、そこからEMにのめり込み、最後は職場であった障害者福祉施設の新規事業として「福祉的就労の場」を目的とした新規事業所の立ち上げまでに至ります。

その新規事業はEM技術を利用した合鴨・有機野菜事業を組み合わせた複合型農業です。

最後にこの事業以外にレストラン事業も加わります。

今回は、この経過を連載で語らせていただきます。

連載の十一回目は、何故か飲食業とは無縁な私達がレストランを開店した話となります。経営としては成功とは言えませんが、特定の人達に評価を受けたのです。そして考えさせられました。

今回は、評価を受けた理由を私の見解を中心に説明させていただきます。

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地域の事情で飲食業に参入することに

私達の地域は過疎地で人口が毎年、減少していました。

過疎地の問題は、地域を支えるインフラが地域経済で補えない状態になることです。

たとえば、災害時に助ける機材や人がいないと手遅れになる場合があり地域行政や住民が真剣に取り組まなくてはならない問題ですが、取り組まないのです。他人任せで国・道が何とかしてくれるとでも思っているのでしょうか。

町が運営している観光牧場の飲食店が撤退することになり、公募が始まりますが、応募なく町は困っていました。

観光牧場は、年々来園者数は減少していて飲食店を営業していても経営が成り立たない状態だったので当然ですね。

就労支援事業所は運営に係る人件費が国から出ているので、収益事業では、そこで働く利用者賃金を賄えば経営できる利点があります。

その利点もあり、町からの要請が入ります。内部で検討し悩みましたが、合鴨・有機栽培の生産物を生かした経営ができればそれなりの評価を受けれると思い決断したのです。

元々、町は私達が進めている合鴨・有機栽培の事業には非協力的であったので、この事業は地域活性化に繋がる事業であることを理解してもらい町からの協力を仰ぐ狙いもあったのです。

準備期間の無い中で加工品には頼らないメニューへ

決断したのはいいのですが、準備期間が1ヶ月半程しかありません。それに未経験の事業です。

最初に飲食店のコンセプトを決めました。

当然、安全で安心できる食品の提供と地産地消となりましたが、業者の話では加工品を上手く使うのが経営する上でのポイントとの助言を受けて加工品の試食会を実施することになります。

試食会では、ほぼ全て加工食品が採用されませでした。理由は単純に「美味しくない」で、職員の拘りも大したもんです。

結局、ほぼ加工食品は採用せずに自家製造と取引のある肉屋に依頼しての製造と原料の提供をお願いすることになったのです。苦労しました。

経営して解る飲食店経営の過酷さ

開店までには、店舗の改築、職員の採用、調理機材の搬入、行政手続き等を短期間にこなし大変な思いをして開店に至ります。

価格は、加工食品を使用していないので高めで、周りからは田舎だから低めに設定したほうがいいとの意見が多くありましたが、無視しました。

原価計算すれば、当然の結果なのです。

開店後に食材に拘りのあるレストランと口コミで評判になり、固定客も増えて経営はいちを安定します。
 
しかし赤字なのです。元々の原材料費が高いからで、うちは就労支援事業として経営しているから成り立つのであって一般の店ならやっていきません。

資本主義の厳しさかもしれませんが、一般の飲食店はこの厳しい環境の中で黒字経営を維持していることは驚きです。

飲食店の経営は、「物価高による経費増」と「人手不足による人件費の高騰」による影響で現在の価格を企業努力で補うことは難しくなっています。

また、休日出勤が当たり前の上に長時間労働が普通に行われパート職員中心での運営があたり前の労働環境では、人材の育成はままならず人材の使い捨ての世界です。

これらの問題を解決するには大幅な価格上昇でしか解決できないのではと思っています。

独自性が生き残りカギへ

私達のレストラン経営である程度の評価を受けたのは、間違いなく食への拘りと美味しさです。

特に評価を受けたのが、ラーメンで固定客が増えて、周りからレストランではなくラーメン屋と言われてました。

ラーメンの評判がいいのは理由があります。それは職員の中に元ラーメン屋を経営していた職員がいたからです。彼は職人気質で、以前はうちと取引歴があり合鴨ガラを購入して「合鴨白湯ラーメン」を考案した方で本物の料理人です。

当然にラーメン素材は彼が担当して普通のラーメンスープも合鴨ガラを使用、これだけで他のスープとは違い旨味が違います。合鴨白湯ラーメンスープは合鴨ガラの他に首・手羽を加え長時間煮込んだ特性スープでメンマ・チャーシュも手作りなのです。

札幌の業者からも、札幌ではこれだけの上手いラーメンはないと言われていました。

これ以外にも、うちの合鴨肉を利用した鴨南蛮、塩合鴨定食や加工施設で作ったハンバーグ等が人気を得ていました。

業者提供の食材のうち、試食会で全員一致した食材があります。それはソフトクリームでその業者の製品はレトルト処理がされていなく取り扱いが冷凍なために前日に冷蔵庫で解凍しなくてはならない手の係る製品だったのです。ただし、味は確かでレトルト臭がなく牛乳素材の味を楽しめる食材で、これも好評を得ていました。

難点はどうしても価格が高くなることでしたが、一度食べてもらえれば理解していただけたのではないでしょうか。

まとめ:自家生産・製造に拘る

今の経済状態の中で飲食店を継続して経営することは難しいとしか言えません。

無理して拘れば価格が上がり、都会での競合店との競争には勝てないからです。

自分の経験から考える解決方法は、「自家生産した食材を中心とした飲食店」又は「食材提供農家と直接契約しての飲食店」の経営かなと思います。

一つは兼業農家です。米農家が米粉パンを製造し米粉パン中心の飲食店又はパン屋を経営するパータンです。食材により色々なパータンが存在するのでしょう。

次のパータンは農家ではなく他業種との兼業で「個人陶磁家が飲食店を経営し制作した食器で料理を提供する」及び「個人画家が自分の作品を鑑賞してもらうための飲食店」等で、考えれば面白そうなパータンが多数ありそうです。

一番いいのは、料理だけで評価を得て経営できるパータンですが、現状では難しい時代なのです。

私達が挑戦した飲食店も、食材に拘り安全・安心できる料理を提供を目的に自家生産している合鴨肉や有機野菜を原価で利用できる強みも生かして経営した経験からもいえることなのです。

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