2024年1月30日更新
私がEMと関わったのが2001年からで、そこからEMにのめり込み、最後は職場であった障害者福祉施設の新規事業として「福祉的就労の場」を目的とした新規事業所の立ち上げまでに至ります。
その新規事業はEM技術を利用した合鴨・有機野菜事業を組み合わせた複合型農業です。
最後にこの事業以外にレストラン事業も加わります。
今回は、この経過を連載で語らせていただきます。
連載の二回目は、実験的に合鴨事業でEMを利用した結果とその後の展開について説明させていただきます。
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合鴨事業でEM利用を実験してみる
EM資材の生産方法等を試行錯誤の上に習得し、家庭菜園は思った以上の結果が出たことにEMの可能性を感じて、職場の担当業務である合鴨事業にEM技術を取り入れる試みをします。
早速、EM利用を合鴨飼育でも実験してみました。
畜産のEM利用は、EM畜産マニュアルに大きく2つの目的が記載されています。
一つ目は定期的にEM活性液を散布することによる「畜舎内環境の改善と悪臭対策」で、2つ目は配合飼料にEMボカシを添加することによる「成長増加と健康状態を保つ」ことだそうです。
合鴨飼育では両方を実験することになり、準備を進めます。
この時は、冬期間だけ合鴨飼育を休止していて春から始める予定で合鴨舎の清掃も終了していた時期でした。
EM畜産マニュアルには、飼育開始前に畜舎のEM密度を高めて悪い菌の占有率を低くしなくてはなりません。
そのためには、清掃してから合鴨舎にEM活性液を1000倍に希釈して散布しなくてはなりません。
当時は2月で北海道の寒冷地で-10度を下回る時期で迷いましたが、実行することにしました。
当日は-15度で畜舎面積から計算して1000㍑のEN1000倍希釈液を噴霧器で散布、散布中にツララは出来るはの状態で本当に3月後半までに乾燥するかが不安だったことを思い出します。
ところが、その不安はすぐに解消しました。3月中頃となり天候が良かったのか合鴨舎は完全乾燥していたのです。
これは後から解ったことですが、EMを構成している菌には「光合成菌」があり、この菌は太陽光をエネルギーとして取り入れて熱を代謝として発する能力があるそうです。多分、光合成菌の働きで合鴨舎の乾燥が促進されたのではないかと思っています。
その証拠として3月前半に水道が亀裂を起こして水漏れしてできた水溜りは見事に凍ったままだったのです。
3月後半に雛が入荷して飼育開始、悪臭が発生しない状態は夏前半まで続きましたが、中頃には少しずつ悪臭が発生したのでEM1000倍希釈液を定期的に散布することで悪臭対策は完璧に成功しました。
次の実験である配合飼料へのEMボカシ3%の添加による結果は、成長が促進されたほどの結果は出ませんでした。
ただし、健康状態は間違いなく改善されたのです。
合鴨屠殺時には、必ず内蔵に異常がある個体が1割前後見られます。これは家畜の食べる配合飼料に問題があります。経済動物である家畜はできるだけ早く成長させることを目的に配合飼料のカローリは高めに設定されるために内蔵疾患を起こすのです。人間で言えば糖尿病ですか。
ところが、EMボカシ3%を添加した配合飼料を食べた合鴨のほとんどに内蔵の異常がなかったのです。
これは高いカローリの配合飼料を与えても健康状態を良好に保てることが証明されて、今後の展開に希望を持っことができたのです。
EM利用で合鴨飼育の展開が変わる
合鴨飼育で成功したEM利用でしたが、数年後に新たな展開を向かえます。グレドアップしたのです。
それは、次の3点でした。
①今までは合鴨舎の清掃に洗剤や消毒剤を使用していたのが、EM活性液を利用した方法に変わる。
ブロイラー飼育等の経験をお持ちの方は解ると思いますが、家禽飼育では徹底した清掃とその後の消毒作業が大変です。何かにつけ消毒なのです。こんなことしていると職員が病気になると思うくらい消毒します。
だから、うちの合鴨舎は消毒していませんと言うと専門家には相手にされないでしょう。
これは、病気発生によって飼育している家禽が多数死亡したり出荷できないリスクが大きいからです。
忘れていました使用していた配合飼料は抗生物質を除いたものです。
EMを利用することで、何故に消毒しなくていいかは、EM活性液を消毒剤の変わりに使用するからです。EM活性液は水素イオン濃度が3.0まで下がります。つまり極度の酸性になるのです。合鴨舎を清掃する際にもEM活性液を1000倍にした希釈液を使用しますが、これは悪臭対策とEMの密度を上げる目的で使用するのです。
清掃後に乾燥するの待ちます。
乾燥後にEM活性液の原液又は5~10倍に希釈した希釈液を表面が濡れる程度に散布するのです。病原菌等が極度の酸性環境では消滅する効果を利用しているのです。そのうえに、よりEM密度が上がり悪い菌が悪さを出来ない環境になるのです。
②EMボカシを配合飼料に添加することにより、飼育期間を短縮して配合飼料コスト削減と屠殺時における毛抜作業の軽減化を図った。
最初の実験で成長促進の効果は見られませんでしたが、その後にカロリーを上げても内蔵がやられないなら配合飼料のカロリーを上げて成長促進を図ることになります。
結果は成長促進して個体重量が増加しました。
そして観察して解ったことが成長が始まる時期が早まることでした。
通常、合鴨は9週齢(63日)母体化して屠殺時期を向かえますが、明らかに早まるので屠殺時期を8週齢(56日)で屠殺した結果は肉質や味にも変化はなかったのです。
これは飼育期間短縮による配合飼料経費の削減だけではなく、今まで苦労していた屠殺時の毛抜工程での問題も解決してしまったのです。
毛抜工程では毛変わり時期により毛が抜けないこと及び飼育日数が伸びるほど毛が抜けにくくなります。8週齢(56日)で屠殺すると毛が抜けやすくなり、今までかかっていた約半分の時間で終わらせることができるようになったのです。
国産合鴨肉の価格が高いのは、この毛抜作業に人手がかかるためのコスト増が原因と言われていますが、何とこの問題が解決してしまったのです。
なお、余談となりますが、配合飼料に添加するEMボカシの量は3%です。より多くすれば何らかの効果が出るのではないかと思いEMボカシの量を5%に上げた結果が通常の合鴨は脂肪がのった合鴨になるのが脂肪が少ない合鴨に成長してしまいました。
これはEMに脂肪を燃焼する酵素が含まれていたために起きた現象で製品としては望ましくありませんでした。
このことをヒントにダイエットに活用し大幅な体重減に成功した職員がいたこともお伝えします。
③合鴨飼育時の敷料に利用しているはオガクズを手間暇をかけずに短期間で堆肥化した。
飼育終了後に糞尿で汚れた敷料であるオガクスを除去する際にEM希釈液の濃度を上げて散布してから堆肥舎へ移動すれば、EMの密度が上がり堆肥化を促進します。
また、EMで処理した堆肥は嫌気発酵なので切り替えが不要となり堆肥化の労力軽減に繋がりました。
この結果から、ついでにオガクズも発酵させればより効果が高まるのでは思いましたが、そこまでの実験は行えませんでした。
まとめ:畜産へのEM利用は、畜産の知識・経験が前提となる
畜産へのEM利用は、EM畜産マニュアルを参考にすればそれなりの効果が得られます。
ただし、EM技術を理解して対象となる畜産の置かれている環境や地域性、家畜・家禽の特性及び今までの知識・経験を活かしてEM技術を応用すれば大幅な労力・コスト削減が可能になるのです。
そのための基礎は、今までの飼育環境が悪い菌層に汚染されているかを理解しEM等の有用菌が専有する環境を作り上げることではないでしょうか。
今までは悪い菌を消毒・殺菌して減らせばよいという考えから発想を変えなくてなりません。
なお、配合飼料へのEMボカシ添加はEMボカシの品質が悪いと家畜・家禽に悪影響をおよぼすことがあるので気をつけないといけません。
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