2024年2月1日更新
私がEMと関わったのが2001年からで、そこからEMにのめり込み、最後は職場であった障害者福祉施設の新規事業として「福祉的就労の場」を目的とした新規事業所の立ち上げまでに至ります。
その新規事業はEM技術を利用した合鴨・有機野菜事業を組み合わせた複合型農業です。
最後にこの事業以外にレストラン事業も加わります。
今回は、この経過を連載で語らせていただきます。
連載の四回目は、有機栽培を始めるための準備段階で行ったハーブ試験栽培、予定している有機畑へのEM生ゴミ堆肥の大量投入、EM資材の製造方法の新たな取り組みについて説明させていただきます。
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EM利用のハーブ栽培を経験する
有機栽培の準備を進めているこの時期に、加工施設でハーブを栽培したいとの要望がありました。
時期的に忙しかったので了解して、特に関わらずにいたのです。
当時の加工施設では食品加工でバジルソーセージを製品化して販売していました。
当時はハーブ入の製品が人気だったので、その関係で加工施設の敷地内にハーブ畑を作ることになりバジルを栽培することになったのです。
有機栽培の知識がなかった加工施設職員が事前準備したために未熟な堆肥が投入されいたために、定植したバジル苗に害虫が群がっている状態になっていたのです。
解決策を打診され、この時にはEMを勉強中で考えられた方法がEMストーチュで防除する位の知識しかなく、急遽、EMストーチュを製造して散布しましたが、害虫の勢いは止まりません。葉という葉は全て食われています。
EMストーチュとはEMと焼酎、リンゴ酸で発酵させて、その臭いで害虫を駆除すると言われた資材です。
これ以上の対策がないので担当職員に毎日EMストーチュを散布するようお願いしました。
1週間位たってから、ハーブ畑を見ると害虫は見当らず、害虫に食され元気の無かったハーブ苗が復活して成長していたのです。害虫に食い荒らされた葉も復活していて青々していたのです。
その後はみごと成長して収穫されました。
当初は害虫に食い荒らされ、とても復活するとは思えなかったバジル苗が復活する現象は、本格的に始まる有機栽培でも経験しましたので、後で報告させていただきます。
なお、復活した要因はEMストーチュが効いて害虫が駆除できたからではなく、多分、未熟の堆肥は窒素過多になり、その土壌で育つ野菜も窒素過多の野菜になります。害虫は窒素過多の植物を好みます。EMが余分な窒素を消費してくれたので、その後、害虫はいなくなり復活したのだと後から理解しました。
有機栽培予定の土壌に生ゴミ堆肥を施工しました
有機栽培への移行に伴い、新たに25mハウスを2棟増設することになりました。
新規ハウスと露地栽培の土壌改良を行うために、EM生ゴミ堆肥を土中に埋め込む作業を何ヶ月も行いました。
併せて慣行栽培で使用していたハウスも空いた時期に同様な作業を行いましたが、暖かくなってきた時期に異変が起きるのです。
それは悪臭で、それも今まで経験したことがない悪臭です。そして発生場所は慣行栽培のハウスからだったのです。
EM生ゴミ堆肥は、最初にEMボカシを生ゴミに添加してEM中の特に乳酸菌が中心となり生ゴミを発酵させます。そして発酵した生ゴミを土中に埋めると土壌菌が分解して土に戻るのです。
EM生ゴミ堆肥自体は生ゴミのままですが、発酵により高分子から低分子になり、より分解されやすい状態となっているのです。だから土中に埋めると土壌菌が通常ならば数ヶ月以上かかる分解を低分子なので即座に土に戻してくれるのです。
ところが、慣行栽培ハウスは化学肥料や農薬の影響で土壌菌の働きが鈍っていたために土中に埋めたEM生ゴミ堆肥が低温の影響もありすぐには分解されず嫌気状態で腐敗していたのです。この状態での腐敗臭は硫化水素と酪酸臭が混じった臭いで強烈ですし離れていても臭うのです。
解決方法は簡単でEM活性液を濃いめに希釈して散布すれば、即座に強烈な臭いがなくなりました。
この経験は、EM資材を使用するには土壌の状態を見分け、いま必要な量や処置を行わなくてはならずマニュアルを鵜呑みにしてはいけないことを理解した経験です。
これが、EMは「効くまで使用しろ」、「EMの量を多くしろ」と言われている理由なのです。
EM資材の製造方法を再検討する
有機栽培への準備も順調に進みましたが、ひとつの問題がでてきました。
それは、EM資材である「EMボカシ」と「EM活性液」の大量生産です。
最初に得た知識での製造方法では、コストは掛かるし大量生産するのには適していなかったのです。
有機栽培の規模拡大を前提とするならば超えなくてはならない壁で、最初にEM活性液の大量生産に取り組みます。
EM活性液の大量生産は拡大培養の倍率を上げれば解決します。たとえば10倍から100倍とかですが、問題は品質です。
品質の良いEM活性液を製造することは、他のEM資材を製造するうえでもEM活性液が土台となるため重要な要因です。
今まではマニュアルとおりにEM原液を10倍に拡大培養していましたが、これを無理して倍率を上げて拡大培養しても失敗する例が多くあるからです。
失敗する多くの原因はEMを構成する菌群の特性にあります。乳酸菌と酵母菌の繁殖速度はほぼ同じですが、光合成菌の繁殖速度は異常に遅いのです。なので拡大培養時には必ず光合成菌を加えてやる必要があります。
試行錯誤の結果、新しいEM活性液の製造方法が確立しました。
作業工程は増えて手間暇はかかりますが、拡大培養は200倍となり品質も上がり生産量を拡大できるようになったのです。コストが大幅に下がったのでEM希釈液で倍率を気にすることもなくなりました。
次はEMボカシです。
EMボカシは、マニュアルの製造方法から米ぬかにEM活性液を加えて保温する方法に変えることで製造での失敗はなくなりました。保存容器も変えて大型で気密性の高い製品することで安定して高品質なEMボカシを以前よりは多量に生産することが可能になったのです。
ただし、畑作用に使用するEMボカシと育苗用土(苗販売の関係で量が必要)はトン単位の量となるため、それなりの設備・施設が必要です。この時点では製造方法についても目処がたっていませんでしたが、数年後に解決します。既存の設備・施設を利用してトン単位の量が生産できる方法です。
製造方法は次回のブログで公開します。
まとめ:探究心が問題を解決する
EMに関する情報は、ネットを含め探す努力をすれば情報化社会での日本では比較的に簡単に手に入ります。
手に入れたマニュアルは製造及び使用方法であれ原則を記載したものなので、原料に不備があったり何らかの理由で失敗することもあります。
やはり新しい分野に挑戦するときは何故にこのような処理をする理由等について探求して根本的理論を理解する努力をしないと、次の応用には進めないことを実感しました。
最初は手探りであったEM資材の製造も根本的理論を理解し成功と失敗を繰り返すうちに自分達の置かれた環境や設備の中で最善の製造方法を見つけることができたのです。
また、ハーブ栽培とEM生ゴミ堆肥での経験も有機栽培を開始したときに起きた問題を解決する重要なヒントになったのです。
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