EMを利用した複合型農業の経験談を語る⑤

EM技術

2024年2月2日更新

私がEMと関わったのが2001年からで、そこからEMにのめり込み、最後は職場であった障害者福祉施設の新規事業として「福祉的就労の場」を目的とした新規事業所の立ち上げまでに至ります。

その新規事業はEM技術を利用した合鴨・有機野菜事業を組み合わせた複合型農業です。

最後にこの事業以外にレストラン事業も加わります。

今回は、この経過を連載で語らせていただきます。

連載の五回目は、有機栽培に本格的に取り組んだ1年目の結果を中心に説明させていただきます。

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1年目で結果が出たEM有機栽培

最低限の設備とEM技術・資材を中心した有機栽培は、準備期間を経て2003年4月から始まります。

最初、皆さんから色々と助言や非難の言葉をいただきました。

素人が有機栽培は無理、堆肥作りは手間暇がかかる、土壌作りに最低でも数年はかかる等でしたが、自信はありましたEMを知り家庭菜園で実験済みで結果も出ていたし1年間の準備期間があったからです。

苗作りは、EMを利用した自家製育苗用土を使用し順調に成長し、次は定植です。

基肥は、自家製のEMボカシを施工して灌水には必ずEM活性液を添付しました。

結果は一部アブラムシにやられたこともありましたが、何の問題もなく収穫までに生産量も以前と同様な量以上で拍子抜けしました。

有機栽培への移行がこんなに簡単にできるとは、後からわかりましたが、これがEMの力で慣行農法の経験や知識がなかったことが幸いしたのです。

有機栽培に移行すると収穫量が激減すると言われていたが

今まで慣行栽培で農薬や化学肥料を使用していた農地では、EM等の微生物資材を利用しないで有機栽培に移行すると、1年目は前年の9割程度の収穫量で以降2・3年目収穫量は減少し4年目以降に少しづつ収穫量が回復しますが、化学肥料を使用していた時の収穫量は見込めないそうです。

何故にそうなるのかは単純に以前に施工されていた肥料分がなくなるからで1年目は前年の肥料分が残っているのでさほど収穫量が落ちないのです。有機栽培に移行すると2・3年間は収穫量が減少しその後改善しても以前の収穫量に届かないのが現実です。

ところが結果は減少せずに、逆に多いくらいだったのです。

EMの原則はEM菌密度を上げること

畜産及び有機農業でのEM利用には原則があります。

それは、EMは効くまで使え、効果がないのは量や回数が少ないからで量や回数を増やして様子をみることです。

化学肥料や農薬の場合には必ず使用量が明記されていますが、EMにはありません。

それは土壌により状態が違うために適用量も違うからで、化学肥料の使いすぎで極端に悪い土壌と自然に近い形で放置されていた土壌では微生物層に大きな差があって当然です。

私達が1年目で有機栽培が成功したのは、自家生産していたEMボカシやEM活性液を最初からふんだんに使用したことが要因となったのでしょう。それと元々土壌に汚染もなく、良い状態だったからと思います。

微生物の機能からみた土壌の分類

ここで、微生物相から土壌の分類をしている琉球大学名誉教授の比嘉照夫教授の「微生物の農業利用と環境保全」(農文協)を紹介させていただきます。

「微生物の機能からみた土壌の分類」で四つのタイプに分類しています。

腐敗型土壌、浄菌型土壌、醗酵型土壌、合成型土壌です。

腐敗型土壌は、土壌中の糸状菌の中のフザリウム占有率が高く(15~20%)、窒素分の高い有機物を施用すると悪臭を発し、ウジが発生したり、病虫害が多発しやすく、生の有機物の施用は有害となる。また、腐敗型土壌は、無機養分が不溶化し土壌も硬く物理生が悪い。

水田ではガスの発生が著しい」と有ります。土が汚れていると言うことは、土壌微生物が有用菌よりも有害な腐敗菌が優先しているということが言えると思います。

浄菌型土壌は、「抗菌物質などを生成する微生物が多く、土壌病虫害がでにくい土壌を浄菌型土壌という。窒素分の高い生の有機物を入れても腐敗臭は少なく、分解後は山土の表土の臭いがある。土壌も比較的団粒化が促進され、透水性も良好となる。病気にならないが収量はやや低い。」とあります。

醗酵型土壌は、「乳酸菌や酵母などを主体とする発酵微生物が優先している土壌で、生の有機物を施用すると香ばしい醗酵臭がして、コウジカビが多発する。フザリウム占有率も5%以下で耐水性団粒形成能が高く、土壌は膨軟となり無機養分の可溶化が促進される。土壌中のアミノ酸、糖類、ビタミン、その他生理活性物質が多くなり、作物の生育を加速的に促進する。水田に於けるガスの発生は抑制される。」と有ります。

合成型土壌は、「光合成細菌や藻菌類、窒素固定菌などの合成型の微生物が優先している土壌で、水分が安定していると、少量の有機物施用でも土壌は肥沃化する。フザリウムの占有率は低く、浄菌土壌と連動する場合が多い。

水田におけるガスの発生は抑制される。そして、醗酵系とこの合成系が強く連動すれば、醗酵合成型土壌という最も理想的な土壌となる。」とあります。

まずはEM等の微生物資材を使用して微生物層を改善しょう

日本の農地の約90%が化学肥料や農薬の多投入等により、腐敗型土壌であるとの見解もあり、まずは土の微生物相を改善しなければなりません。方法としてEMを中心とした微生物資材を有効に活用することで最小の手間暇とコストで土壌改良が可能となります。目指せ「合成型土壌」です。

また、土壌の物理性(土壌の硬さ、易耕性、透水性、保水性、通気性)の改善も必要ですが、経験から言えばEM生ゴミ堆肥が有効で、高価な資材を購入しなくても時間をかけて改善すればいいのであって、考え方を変えれば、その土壌にあった作物を栽培すれば解決する問題です。

土壌の物理性で留意しなくてはならないのはPHで作物によって適正値がありますが、PH6.0~6.5(弱酸性)内であれば問題ないと思います。PHが酸性値が高い場合は貝化石資材を使用して調整します。消石灰は元々、有機栽培では使用できないし土が固くなるので問題外です。

定植後、特に有機栽培の一年目はEMボカシとEM活性液をふんだんに使用し栽培中はEM菌の密度が下がらないよう灌水時などにEMを散布します。

EMで効果がでないとか失敗した事例のほとんどがEM使用をケチった場合が多いです。

そのためにもEMボカシとEM活性液は自家生産できるように培養技術を習得し、生産場所と道具・機械を確保します。

次年以降は同様にEMを利用していると感覚でEMの使用量が分かるようになります。多分、生育状況等の経験を積むとことで判断できるのだと思います。経験上で言えば生育だけではなく選定した枝・葉がすぐに分解しなくなることや落ちた果菜の実が腐らずに白カビが生えて分解するなどの状況です。

土壌が「合成型土壌」までになれば、後は手間いらずなります。適正な時期にEM資材を添加するだけです。

まとめ:EMを利用した有機栽培の可能性を知る

覚悟を持って取り組んだ有機栽培でしたが、いとも簡単にできてしまいました。害虫や病気が発生するわけでもなく、収穫量も逆に多いくらいにです。

これもEMの力で、言い方を変えれば微生物の力を最大限に活用すれば自然界では不都合なことは起きないと言うことなのかもしれません。

また、有機栽培を安定して実施するための前提条件である土壌改良で理想である「合成型土壌」への移行を模索することになります。

ただし、栽培技術以外での問題である販売先、規模拡大する方法(慣行農法に方法は参考ならない)等の難問がまっていたのです。

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