EMを利用した複合型農業の経験談を語る⑨

EM技術

2024年2月6日更新

私がEMと関わったのが2001年からで、そこからEMにのめり込み、最後は職場であった障害者福祉施設の新規事業として「福祉的就労の場」を目的とした新規事業所の立ち上げまでに至ります。

その新規事業はEM技術を利用した合鴨・有機野菜事業を組み合わせた複合型農業です。

最後にこの事業以外にレストラン事業も加わります。

今回は、この経過を連載で語らせていただきます。

連載の九回目は、せっかく土壌改良して年々良くなっていたハウス栽培でしたが本体施設の都合で移動せざるをえない結果となります。ところが移動先の土壌が最悪で苦労した話とハウスでの年間栽培への挑戦した話を中心に展開します。

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最悪な土壌へ移動してハウス栽培へ挑戦する

露地野菜の規模拡大には十分な投資資金が掛かるので、順調なハウス栽培を中心に展開していたこの時期に良くない話が持ち上がります。

それは本体施設の新築場所の話で、残念ながら現在のハウス場所が一番の適地だったのです。

早速、ハウスの移動先を探しましたが、唯一対象となった場所は元グランドで使用していた土地で土壌環境は最悪だったのです。何が最悪かと言うと山砂と粘土地で数年前からは使用していなく乾燥すると剣先スコップでも刃先が入らず跳ね返されくらいの土地だったのです。

時間もなく事前に十分な土壌改良が出来なく粘土土壌でハウス設置にも時間がかかり、最初の耕耘作業に入りましたが、余りにも土壌が固く耕運機では起こせずトラクターのロータリーで何とか起こせたのです。

本当に栽培できるのかの状態だったのです。

栽培中はよりEM密度を高める努力をしましたが、やはり収穫量は落ちてしまいました。

この時の気持ちは、収穫量が落ちたことよりは無事に栽培できたことに感謝したぐらいです。

栽培終了後に、今まで以上にEM生ゴミ堆肥を施工することを数年繰り返すうちに土壌改良が
進み目標としていた醗酵型土壌に改善されていきました。

やはり土壌改良にはEM生ゴミ堆肥が一番であることを認識した経験です。

生ゴミでなくても生の有機物、たとえば刈り取られた多量の雑草や生の牛糞堆肥等は炭素率が低い
のでEM活性液を100倍程度に希釈して散布すると温度にもよりますが、すぐに分解します。

この方法を繰り返すことで、私達の経験から言えるのは土壌改良が急速に促進されると言うことです。

ハウスでの年間栽培に挑戦する

北海道は、積雪の関係上もありハウスの年間栽培を行っている農家は少ないです。

そして実行している農家は暖房設備を設置しての栽培がほとんどで、それは、暖房がないと積雪時に雪の重さでハウスが崩壊してしまうからです。

ほとんどの農家は冬になるとビーニルを外し骨組みだけにして放置して春になってから、またビーニルを張って栽培を開始することを繰り返しています。

単純に、この作業が春先の繁忙期に重なること、冬場作業がなく暇なこともあり暖房なしでの年間栽培に挑戦することになります。この挑戦は先進有機農家の事例を知っていたから、その気になったのです。

まず心配なのは、暖房がないため積雪によるハウス倒壊で、次のとおり対策をしました。

①フィルムをビニールからPOフィルムに交換しました。
POフィルムは強風でも切れにくう、長期間(3~5年程度)の耐久性があり張替え頻度が減らせます。また、ビニールのたるみをなくすためのハウスバンドも必要がなく凹凸のない平面上で張れるため冬に強風が吹く地域では雪は吹き飛んでしまいます。

②ハウス間の除雪を徹底しました。
ハウスに積雪しても、ほとんどの雪がハウスサイドに流れます。ハウスサイドの雪が一杯になると天井の雪も落ちなくなり崩壊の危険性が増すのです。

この問題を解決するには、ハウスサイドの雪をすぐに除雪することなのです。

以上の対策で冬期間におけるハウス倒壊の危険性は減少しました。

次に冬期間における作付作物は暖房を使用しないためホウレンソウ位しかなく、すぐにホウレンソウに決定しました。夏野菜が終わるのが10月初旬で作付準備期間を10月一杯として11月にホウレンソウを作付します。寒さ対策としてハウスは二重して作付部分をトンネルで囲いました。

つまり、三重状態で栽培することになったのです。

11月中は順調に成長し12月に入ると太陽が照れば、室温も上がり成長しますが、曇なら成長しません。1月中はほとんど成長せずに、やっと2月後半に収穫し出荷できたのです。

その後、数年間の経験を積み、次のとおりに出荷することになります。

・ホウレンソウの定植時期は10月と11月の2回として、12月と2月後半に出荷を目指す。
・三重のトンネルはやめて、ハウス二重で栽培する。

二重と三重で比較して成長に大きな差がないので、手間暇を削減するために三重をやめました。

冬場に生産されたホウレンソウは糖度が乗り美味しいと評判になります。多分、有機栽培であることも美味しさの要因になったのではないかと思います。

ここで冬場のホウレンソウ栽培での貴重な体験を紹介します。

2月収穫のホウレンソウは、ハウス内で-15℃を下回る時もあります。その時、ホウレンソウは死んだふりをします。しおれてしまうのです。

その場合は収穫前にジェットヒーターでハウス内を加熱すると起き出します。生き返るのです。それから収穫して出荷となります。ホウレンソウの生命力には驚かされます。

また、1・2月は低温のために、ほとんど成長しないので出荷時期を選択することが出来ます。発注があればジェットヒーターでホウレンソウを生き返へさせて出荷すればいいのですから・・・

無事に冬場のホウレンソウ栽培は成功しました。

ところが人間は欲深いもので、2月でホウレンソウ栽培が終わると夏野菜の定植時期4月後半から5月初旬までの間、約2ヶ月間が空きます。この時期にも何か栽培しょうとなったのです。

候補に上がったのが、レタスです。北海道では春レタスが6月から出荷が始まりますにで、4月中に出荷できれば強みになるとの考えです。

早速、挑戦しましたら以外と簡単に成功しました。レタスは品種にもよりますが、寒さに強い作物で、ある程度苗で成長させておいてから定植しても、レタス苗は3月の寒さに負けないで順調に成長したのです。

そして、このレタスも苦味がまったくなく柔らかいと地元で好評となり、地元スーパーでは、うちのレタス出荷が始まると他の出荷先を止めて、この時期だけは、うちのレタスしか取り扱わなくなりました。担当者によれば、この時期だけレタス販売量が増えるそうです。

これが暖房無しで年間栽培を計画し実行した結果です。最終的には三作となり3月レタス栽培、5月から夏野菜(ミニトマト、ピーマン、ナス等)、10月からホウレンソウ栽培となったのです。

北海道の寒冷地でもここまで栽培できるのなら、他の地域であればもっと自由に作物を選択できるはずです。

寒冷地でない地域でハウス栽培を手かげている有機農家の方は、是非、挑戦してみて下さい。

もちろんEMを利用してです。

まとめ:ハウスでの年間栽培が可能になればサラリーマン農業も可能に

自然における環境修復能力をご存知ですか。たとえば酸性土壌であればそこに生える雑草は酸性を中和する種類の雑草が生えます。また、ミネラル分の少ない土壌ではスギナが生え、その地中深くまで伸びる根からミネラル分を地上にくみ上げているのです。

この自然の力をEM等の微生物資材で促進させると、本来、時間のかかる土壌改良でも短期間で解決できるのです。

山砂と粘土土壌で1年目から有機栽培が可能になるのは、全て微生物の力だと思っています。

冬場のホウレンソウ栽培から暖房無しでのハウス通年栽培が可能となり、作物は限定されますが三作が行えるということは安定した労働環境を構築できると言うことは農業の可能性を高めます。

都市近郊でも農地で50mハウス3棟分の農地が確保できれば、有機栽培で安全性が保証され当然、EMを使用することで味も良くなり、都市近郊であればお客様や販売先にも困らないでしょう。

そして何と言っても農業は気候に左右されますが、ハウス栽培ならそのリスクは軽減できて安定した収益も確保出来るなら、多分、採算に合った農業が出来てサラリーマン農業も可能になるのです。

農業は時期的に過酷な労働を強いられるのが常識になっていますが、EM等の微生物資材を上手く利用して創意工夫を重ね設備投資を行えば過酷な労働は解消さます。

そうなれば有機栽培の理念に共感する新時代の若者にとっては魅力的な職業になるのではないでしょうか。

私は、EM利用の複合型農業を経験してから本心でそう思えるようになりました。

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